「AIで作ったか」より「どこを誰が作ったか」|制作物に来歴が残る時代の発注と社内ルール

AI CCO
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「AIで作ったって、言わなきゃいけないんですかね」
デザインの話になると、社長からはこの3つが出てきます。
「チラシをAIで作ってみたんですが、商品名の文字がところどころ崩れていて、結局作り直しになりました」
「制作会社にお願いしている販促画像、どこまでAIを使っているのか、正直わかっていません」
「AIで作ったって、言わなきゃいけないんですかね。言ったら安っぽく見られませんか」
3つとも、見た目の善し悪しの話ではありません。制作物について「誰が、どこを、どうやって作ったのか」が、社内にも社外にも残っていないという一点に集約されます。
止めているのは「センス」ではなく「記録」
これまで制作物は、仕上がった見た目だけで評価されてきました。どのソフトで、どの素材を使い、どこを人が手直ししたのか。それは制作会社の頭の中にあり、それで困りませんでした。選択肢が少なかったからです。
いま崩れているのは、その前提です。作り方が増えたぶん、「どうやって作ったか」を説明できないと、外注も内製も判断が止まります。センスがないから決められないのではなく、判断材料が残っていないから決められないのです。そしてこの「記録」は、業界の共通仕様として整備が進んでいます。
2026年7月31日、C2PAが「AI生成物の書き方」の白書を公開した(出典は記事末尾)
コンテンツの来歴(作られ方の履歴)の標準を策定しているC2PAは、2026年7月31日、白書「Use of Content Credentials to Identify Synthetic and Non-Synthetic Content」を公開しました。改ざんを検知できる暗号署名付きのマニフェストに、AI生成物・AI加工物・非合成コンテンツをどう記録するかを整理したものです。
要点は5つあります。IPTCの語彙に基づく機械可読な分類(digitalSourceType)。モデルの来歴と人間の関与度を記録する新しいアサーション「c2pa.ai-disclosure」。AIで加工した箇所の範囲指定(Regions of Interest)。プロンプト・参照画像・シード値といった生成レシピの記録。そして作成・編集の標準語彙(Actionsアサーション)です。
専門用語が並びますが、社長にとっての意味はひとつです。「AIを使ったか否か」の二択ではなく、「どのモデルで、どこを、どれだけ人が関与して作ったか」を記録する方向に標準が進んでいるということです。
C2PAは2026年7月27日、TikTokを一般メンバーからステアリングコミッティメンバーへ昇格させたと発表しました。TikTokはContent Credentials(C2PA標準)に加え、自己申告型のラベリングツールと不可視ウォーターマークを組み合わせ、これまでに30億件超のコンテンツをAI生成として表示済みだと説明しています。自社が広告や採用でSNSに投稿する画像・動画も、プラットフォーム側で判定・表示される前提で考える段階です。
2026年8月7日、xAIが「文字とレイアウト」に踏み込んだ画像生成を一般提供(出典は記事末尾)
もうひとつ、現場に効くニュースがあります。xAIは2026年8月7日、画像生成・編集モデル「Imagine Image 2.0」の一般提供を開始しました。grok.com/imagine、およびiOS・Androidアプリで、新しい「Quality Mode」として使えます。API(console.x.ai)ではモデルID「grok-imagine-image-2.0」として提供されます。
xAIは「実務で使える画像」を目標に開発したとし、指示への忠実性、デザイナーのようにタイポグラフィとレイアウトを設計する能力、情報量の多い複合ビジュアルでも小さな文字が鮮明に出る点、生成・編集を通じて入力素材の特徴を保持する点を挙げています。
冷静に読んでください。これはxAI自身の説明であって、自社のチラシで再現される保証ではありません。ただ、画像生成AIの弱点だった「文字が崩れる」問題に、開発側が正面から取り組み始めたことは確かです。冒頭の悩みを、半年前の結論のまま放置してよい時期ではなくなりました。
社長が今週できる3つのこと
1. 文字が主役の1枚で、いまの実力を測る
チラシ、店頭POP、SNSバナー。中小企業の販促物は、写真より文字が主役です。「きれいな画像が作れるか」ではなく、自社の商品名・価格が正しく出るかを見てください。
試すのは1枚で十分です。来月配る予定の販促物を1点選び、同じ内容をAIで作らせて並べる。判定は「デザインとして良いか」ではなく、文字が1字も間違っていないか、価格の桁が合っているか、その2点だけです。
2. 発注書に「来歴」の確認項目を足す
C2PAは2026年7月8日付で、非技術者向けの「Content Credentials: Deployment Guidance」v1.0も公開しています。ツール選定にあたっては、来歴情報がどう付くか、AI利用がどう示されるか、自動で付与されるか、作業工程をまたいで保持されるか、後工程のツールが認識できるかを、ベンダーに確認するよう求めています。この5つは、そのまま制作会社への確認項目に使えます。
契約書を変える必要はありません。次の見積依頼のメールに「納品物にどんな来歴情報が付きますか」の一行を足すだけで、相手がこの領域をどれだけ把握しているかが分かります。
3. 「どこまでAIに任せるか」を1枚に書く
外注先に確認する前に、自社の方針を決めます。判断が必要なのは3点。ロゴ・商品写真・人物写真のようにAIで生成してはいけない領域はどこか。背景処理や下書きのようにAIに任せてよい領域はどこか。そして社外に出す前に誰が最終確認するか。
このとき、「AIを使ったか否か」で線を引かないでください。白書が示す方向は、加工箇所の範囲や人間の関与度まで記録する世界です。自社のルールもどこを、誰が、最後に判断したかで書くほうが、あとで説明が通ります。A4で1枚、箇条書きで構いません。
Before / After
Before: 販促物のたびに制作会社へ丸投げし、上がってきた見た目だけで判断している。AIをどこまで使っているかは聞いたこともない。社内で作ったチラシは文字が崩れて作り直しになり、そこで止まったまま。
After: 販促物ごとに「AIに任せる工程」と「人が決める工程」が1枚の紙で決まっている。見積依頼には来歴情報の確認項目が入っていて、相手の力量が発注前に分かる。社外から問われても、誰がどこを判断したかを説明できる。
よくある失敗と、避け方
- 発表された機能を「もう自社で使える」と思い込む → Googleは2026年8月19日、Google Chatに「Ask Gemini in Chat」を導入すると発表しましたが、展開開始は8月26日で、機能が見えるまで最大15日かかる段階的展開です。対象エディションが限られるうえ、Googleアカウントの言語が英語のユーザーのみが対象で、他言語のユーザーは従来のGeminiサイドパネルを使い続けます。「使っているのに出てこない」は、対象外である可能性があります。
- 「AIで作ったと言うと安っぽい」と考えて、記録ごと避ける → 順番が逆です。記録を残すことと、外向けにどう見せるかは別の判断です。まず社内に残す。公表の作法は後から決められますが、記録がなければ決めようがありません。
- ツールの比較から入る → 先に、自社の販促物のうち文字が主役のものを洗い出してください。何を作りたいかが決まっていないと、どのモデルが優れているかを読んでも判断に使えません。
- 外注先が消えることを想定していない → 東京商工リサーチは2026年8月2日、2026年上半期の「デザイン業」倒産が40件(前年同期比166.6%増)で、2012年同期の45件以来14年ぶりに40件を超えたと発表しました。同社が挙げる第一の類型は、顧客側の内製化による受注不振(生成AIの普及でデザイン関連業務の短時間・低コスト化が可能になったこと)です。ロゴ原本と写真データを、いま手元に取り戻しておいてください。
こんな社長に向いています
- チラシやPOPを外注しているが、見積の妥当性を判断できずにいる
- 社内でAIを使って販促物を作ってみたが、文字が崩れて止まっている
- 制作会社にAIの使用範囲を聞いたことがない
- SNSに広告や採用の投稿をしているが、AI生成の表示について方針がない
- ロゴや商品写真の原本がどこにあるか、すぐに答えられない
ひとつでも当てはまるなら、いま手をつける価値があります。決めるのが早いほど選択肢が多く、遅れるほど「もう決まっていること」に合わせるだけになります。
AI CCOが伴走すること
AI CCOは、社長の代わりにデザインを描く役ではありません。会社の見た目に関する判断を、社長が自分で下せる状態にする役です。
自社の販促物の棚卸し、AIに任せる工程と人が決める工程の線引き、制作会社への確認項目づくり、定期テストの設計、ロゴ・写真・フォントといった資産の所在確認。判断できる材料を揃えるところから始めます。
料金は月5万円(税別)。まずは試したい方には、お試し月3万円(税別)もご用意しています。