BGMもナレーションもAIで作れる時代へ|会社の「声」を決めないまま量産しない

AI CCO
ブランドの世界観を創り、ビジュアルで心を動かす
「動画は撮ったんですが、音のところで止まっています」
デザインの相談で、この夏いちばん増えたのがこの話です。
「採用動画を撮ったものの、BGMをどれにしていいか分からず、公開できないまま3か月経ちました」
「フリー素材の音楽を使いましたが、商用利用の規約を読み切れていなくて、正直こわいまま出しています」
「ナレーションは社員に読んでもらいましたが、聞き取りにくいと言われて、結局テロップだけにしました」
3つとも、映像の腕前の話ではありません。会社として「どんな音を出すか」「誰の声で話すか」を決めていないという、たった一点から来ています。
止めているのは機材でもセンスでもなく、「決めていないこと」
見た目については、多くの会社が最低限の基準を持っています。ロゴはこれ、色はこれ、フォントはこれ。ところが音と声には基準がありません。担当者が変わるたびにBGMの雰囲気が変わり、ナレーションの声も変わる。動画を出すたびに、会社の印象が少しずつずれていきます。
これまではそれで困りませんでした。動画を作る回数が、年に数本と限られていたからです。その前提が、この8月に変わりました。
2026年8月20日、BGMとナレーションが「選ぶもの」から「作るもの」になった(出典は記事末尾)
Adobeは2026年8月20日、Adobe Fireflyの音声系ツール「Generate Music」「Generate Speech」「Generate Sound Effects」を一般提供に移行したと発表しました。
Generate Musicは、Firefly Music Modelが動画の尺とムードに合わせて、包括ライセンス済み(universally licensed)のオリジナル曲を生成するもので、商用利用が可能です。Generate Speechは、Firefly Speech ModelにElevenLabsの選択肢を加え、声・テンポ・感情を制御したナレーションを作れます。いずれも別サブスクリプションは不要と明記されています。あわせてFirefly AI Assistantに、1日あたりの生成回数付きの無料枠が新設されました。
社長にとっての意味は明快です。BGMを「探して、規約を読んで、選ぶ」仕事が、「尺とムードを指定して、作らせる」仕事に変わりました。 冒頭の悩みのうち2つは、道具の側で解けるところまで来たということです。
「声」は、もう会社の資産として扱われ始めている(出典は記事末尾)
Metaは米国時間2026年7月14日(日本語での告知は7月15日)、Instagramのリール動画のAI翻訳が日本語に対応したと発表しました。音声をMeta AIが翻訳して吹き替えまで行い、クリエイターの声質やトーンを再現します。リップシンクを有効にすると口元の動きも同期し、翻訳された動画には「AIで翻訳」と表示されます。Instagramの全ての公開アカウントで無料で使えます。
xAIも2026年7月31日、動画生成モデル「Imagine Video 1.5」に画像リファレンスと音声リファレンスを追加しました。狙いは顔と声をシーンをまたいで保つことです。ただし両リファレンスは同日、米国のSuperGrok HeavyとSuperGrok Plus向けに先行提供が始まり、数日かけて全ティアへ展開すると説明された段階です。
方向はそろっています。声を毎回作り直すのではなく、同じ声を保つ。 声がロゴや色と同じ「保つべき資産」として扱われ始めた、ということです。
作れる量が増えるほど、ブランドはバラける(出典は記事末尾)
Canvaは2026年8月24日、シドニーで開催した自社イベント「AI Vision Sydney 2026」の要旨を公開しました。参加者1,200人でソールドアウトし、同社史上最大規模だったとされています。
注目すべきは、Canvaが示したマーケティングデータです。AIの利用が広がるなかで、ブランドの一貫性を懸念するマーケターは94%。一方で、**その維持をAIに任せられると信頼している層は9%**にとどまりました。母集団はマーケターであって中小企業の社長全体ではありませんが、示すところは明快です。作れる量は増えたが、揃える仕事は人の側に残っている。イベントの主題も「AIには雑務をより多く担わせ、人間の判断とクラフトを解放すべきであって、置き換えるものではない」というものでした。
道具の側にも、その前提での変化があります。Adobeは2026年8月27日、Photoshopの新機能群を発表しました。目玉はベータ提供の「AI Assisted Editor」で、従来画面(Pro Editorと改称)とは別に、自然言語のプロンプトバーと生成ツールをまとめた専用画面を用意します。社長に関係が深いのは、Firefly Image 5を用いた「Instruct Edit with Masks」です。画像全体の文脈を理解し、マスク外の顔・ロゴ・ブランド資産を保護します。守るべきものを壊さずに編集する考え方が、製品機能として入ってきました。
社長が今週決めておく3つのこと
1. 既存の動画1本で、音を差し替えて実測する
新しく企画を立てないでください。すでにある採用動画か商品紹介動画を1本選び、BGMとナレーションだけを作り直します。見るのは仕上がりの好みではなく、かかった時間と費用です。音源探しと規約確認の時間が実際に浮くかどうかを、まず測ってください。
2. 「会社の声」をA4一枚に書く
決める項目は多くありません。誰の声で話すか。話す速さ。言い切るのか、やわらげるのか。使わない言い回し。そして社名・商品名・価格の読み方です。見た目の側も同じで、使ってよい色・フォント・言い回しを1枚にまとめます。
AIに作らせる前にこの1枚があるかが、量産したときに揃うかどうかを決めます。 一貫性の維持をAIに任せられると信頼しているマーケターが9%にとどまる以上、この1枚は社長が持つものです。
3. 出す前の確認を、1人に決める
作れる量が増えると、確認が追いつかなくなります。最後に見る人を1人決めてください。社長本人でも構いません。見る項目は3つで足ります。社名・商品名・価格が正しいか。声と音が前回と揃っているか。AIで作ったことを表示する方針どおりか。
Before / After
Before: 動画を作るたびにBGMを探し回り、商用利用の規約を読み切れないまま公開している。ナレーションは手が空いた社員が読み、声も雰囲気も毎回変わる。音のところで止まったまま、公開できていない動画が社内に眠っている。
After: 会社の声と音の基準がA4一枚にある。既存動画1本の実測で、内製したときの時間と費用が分かっている。BGMとナレーションは尺とムードを指定して作らせ、出す前の確認は1人が3項目だけ見る。動画を出すたびに、会社の印象が積み上がっていく。
よくある失敗と、避け方
- ベータの機能を、本番制作の前提に置く → PhotoshopのAI Assisted Editorは8月27日の発表時点でベータ提供です。試すのは構いませんが、納期のある制作は乗せないこと。Pro Editor側の「Prompt to Edit」は結果が生成レイヤーとして非破壊的に積まれるため、戻せる形で試せます。
- 音源の権利を「フリーだから大丈夫」で片づける → FireflyのGenerate Musicは、包括ライセンス済みのオリジナル曲を生成し商用利用が可能だと明記されています。権利の扱いがどこまで書かれているかは、ツールによって違います。使うツールごとに、商用利用の可否がどこに書いてあるかを確認してから量産に入ってください。
- ナレーションの声を、案件ごとに変える → 声はロゴと同じ資産です。Instagramの翻訳が声質やトーンを再現し、xAIが音声リファレンスで声を保とうとしているのも、そこに価値があるからです。最初に決めた声を、意図なく変えないでください。
- 一貫性の管理までAIに任せる → 一貫性を懸念するマーケターが94%いる一方、その維持をAIに任せられると信頼している層は9%です。作る作業は任せ、揃っているかの判断は人が持つ。先に線を引いておけば、量が増えても崩れません。
こんな社長に向いています
- 採用動画や商品紹介動画を撮ったまま、音のところで公開が止まっている
- BGMの商用利用について、確認しきれないまま使っている
- ナレーションの声が、動画ごとにバラバラになっている
- 社内で作る販促物が増えてきたが、揃っているかを誰も見ていない
- AIで作ったことを表示するかどうか、方針を決めていない
ひとつでも当てはまるなら、いま手をつける価値があります。量が増えたあとで基準を作り直すより、増える前に1枚書いておくほうが、はるかに手数が少なくて済みます。
AI CCOが伴走すること
AI CCOは、社長に代わってBGMを選ぶ役ではありません。会社の見た目と音について、社長が自分で線を引ける状態にする役です。会社の声と音の基準づくり、既存動画1本の実測の設計、使ってよい色・フォント・言い回しの整理、出す前の確認項目と担当の決め方、AI利用の表示方針。決めるべきことを、決められる順番に並べます。
料金は月5万円(税別)。まずは試したい方には、お試し月3万円(税別)もご用意しています。