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値上げの話を切り出せないまま下期に入る社長へ|転嫁率39.9%と、9月に用意しておく交渉の根拠

AI CEO

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ビジョン策定・意思決定を支える参謀

「値上げをお願いしたら、次から声がかからなくなるのでは」

この時期、経営のご相談で必ず出てくる声があります。

「原材料も人件費も上がっている。でも、うちから値上げの話は切り出しにくい」

「一度はお願いした。でも、上がった分の半分も通っていない」

「交渉すべきなのは分かっている。ただ、根拠を並べた資料を作る時間がない」

三つ目が本音に近いのではないでしょうか。値上げ交渉を止めているのは、社長の度胸ではなく、説明の準備です。どの品目が、いつから、いくら上がり、そのうち自社が何割を負担したのか。この一枚がないまま「原価が上がったので上げてください」と言っても、相手も社内を通せません。

そして、その一枚を作る人が社内にいません。帝国データバンクが2026年8月17日に公表した調査では、2026年7月時点で正社員の不足を感じている企業は51.3%で、7月としては4年連続で50%を超えました。一方で非正社員の不足は28.8%です。**足りないのは「手」ではなく「任せられる人」**で、原価計算や交渉資料のような後方業務ほど社長本人に残ります。

価格転嫁率は39.9%で再び4割割れ。9月は国が定めた「価格交渉促進月間」

下期の計画に直結するニュースを二つお伝えします。

帝国データバンクが2026年8月28日に公表した「価格転嫁に関する実態調査(2026年7月)」によると、コスト上昇分に対して「多少なりとも価格転嫁できている」企業は75.8%で、前回2026年2月調査から1.1ポイント低下しました。そして価格転嫁率は39.9%。前回の42.1%から2.2ポイント下がり、再び4割を下回っています。「10割すべて転嫁できている」企業は3.4%にすぎません。調査は全国2万2,350社を対象に2026年7月17日から31日に実施され、有効回答は1万518社(回答率47.1%)です。

39.9%という数字は、裏返せばコスト上昇分の6割を自社が飲んでいる計算になります。しかも企業規模別では大企業41.6%、中小企業39.7%、小規模企業38.3%と、規模が小さいほど転嫁できていません。業種別では「飲食店」28.7%、「旅館・ホテル」23.0%と、消費者に近い川下業種が低い水準です。

もう一つが日付の話です。経済産業大臣は2026年8月27日付で、関係事業者団体の代表者宛てに2026年9月の「価格交渉促進月間」の実施について周知依頼を発出しました。9月は、価格交渉を切り出すことが公に後押しされる月です。

今回の月間からは、官公需の取引実態をより正確に把握するため、官公需に特化した調査が新設されます。9月下旬以降、受注側の中小企業30万社を対象に主要な発注企業(最大3社)との価格交渉・価格転嫁・支払条件を問う調査と、官公需取引のある最大15万社を対象に主な発注機関(最大5者)を問う調査が行われ、結果に基づいて発注者ごとの取組状況が公表されます。国や地方公共団体との取引がある会社は、今回から新たに対象になり得ます。(出典は記事末尾)

9月までに、社長がやっておく三つのこと

1. 「どこまで飲んだか」を一枚にする

交渉の材料は感覚ではなく推移です。主要な仕入品目の単価、外注費、人件費、エネルギー費を2年分並べ、取引先ごとに「上がったコスト」と「もらえた値上げ幅」を引き算して自社の負担率を出します。全体で39.9%という物差しがあるので、自社が平均より上か下かがすぐ分かります。

この集計はAIが得意な領域です。ChatGPTのMicrosoft ExcelおよびGoogleスプレッドシート向けアドインは、2026年5月7日に全ユーザーへグローバルで一般提供されたと報じられています。表計算ソフトを離れずに、未整理のデータの並べ替え、数式の作成、値上げ幅を変えたシナリオ計算ができます。新しいシステムを入れる話ではなく、いま使っているファイルの中で、根拠資料を作る手間を先に潰すという順番です。

2. 取引先を「交渉の順番」で並べ替える

全社に同時に切り出す必要はありません。通りやすい相手から始めます。判断材料は公開されています。

中小企業庁は2026年8月4日、価格交渉促進月間(2026年3月)フォローアップ調査の結果として「発注者リスト」を公表しました。10社以上の受注側中小企業から「主要な取引先」として挙げられた発注側企業557社と、92の国の機関・地方公共団体について、価格交渉・価格転嫁・支払条件の回答状況を点数化し、4区分に分類したものです(調査は30万社に配布、回答企業数69,625社)。ただし、各発注者のすべての状況を網羅的に整理したものではないとされている点は押さえておいてください。

もう一つの目印が「パートナーシップ構築宣言」です。経済産業省は2026年7月7日、7月6日時点で宣言企業数が10万社に到達したと公表しました。発注者側の立場から、代表権のある者の名前でサプライチェーン全体の共存共栄などを宣言する取組です。中小企業庁の受注側企業調査では、宣言企業は未宣言企業と比べて価格交渉・価格転嫁への対応が良好であることが示されており、宣言している取引先から順に声をかけるという並べ方には根拠があります。

3. 9月に届く調査に、正確に答える

9月下旬以降、受注側中小企業30万社を対象とした調査が動きます。ここで正確に答えることが、発注者ごとの取組状況の公表を通じ、来期の取引条件に効いてきます。主要な発注企業(最大3社)について問われるので、9月に入る前に「どの取引先を、どの数字で答えるか」を決めておきましょう。

Before / After

Before: 値上げの必要は感じているが、根拠資料を作る時間がなく「様子を見る」まま下期に入る。交渉できても口頭ベースで、上がった分の一部しか通らない。翌期も同じ状態から始まる。

After: 品目別・取引先別のコスト上昇と負担率が一枚にまとまり、自社の転嫁率を数字で言える。9月の月間に合わせて通りやすい取引先から交渉を始め、調査にも実態を反映できる。次の中期計画では、転嫁率が売上や利益と並ぶKPIとして毎月見られる状態になる。

よくある失敗と、避け方

  • 「原価が上がったので値上げをお願いします」だけで交渉する → 品目・時期・上昇額・自社の負担率まで分解して示す。相手の社内にも稟議があります。通す材料を渡すのが交渉です。
  • 全取引先に一斉に切り出す → 発注者リストや宣言の状況を見て、通りやすい相手から順に進める。最初の一件が通れば、社内に交渉の型が残ります。
  • 値上げの話を、コスト削減の話とセットにしない → 交渉と省力化は両輪です。東京商工リサーチによると、2026年7月の「人手不足」関連倒産(負債1,000万円以上)は63件で7月として過去最多、うち「人件費高騰」を要因とするものは36件と前年同月の2.1倍。コストは上がり続ける前提で計画を組む必要があります。
  • 交渉を1回のイベントで終わらせる → 転嫁率を毎月見る数字にします。厚生労働省が2026年7月28日に公表した令和8年度の最低賃金額改定の目安はAランク54円・B/Cランク56円で、目安どおりなら全国加重平均は1,176円(上昇額55円、引き上げ率換算4.9%)。これは目安であり、実際の額は各地方最低賃金審議会の答申を経て各都道府県労働局長が決定します。決まってから慌てないために、先に数字を回しておきます。

こんな社長に向いています

  • 値上げの必要は分かっているが、根拠資料を作る時間が取れない
  • 取引先ごとに、どこまでコストを飲んでいるかを即答できない
  • 交渉が担当者任せで、結果が社内に残っていない
  • 国や地方公共団体との取引があり、9月からの調査の対象になり得る
  • 下期の計画を、値上げと省力化の両方から組み直したい

ひとつでも当てはまるなら、9月が始まる前の数日が、いちばん費用対効果の高い時間になります。

AI CEOができること

AI CEOは、社長の代わりに決めるのではなく、決めるための材料を毎回そろえる役割です。取引先別のコスト上昇と負担率の集計、交渉の優先順位づけ、持っていく説明資料の下書き、月次で転嫁率を追う仕組みづくりまでを、社長との対話の中で形にし、中期計画とKPIの言葉に翻訳します。

価格交渉は一度切り出せば終わる仕事ではなく、コストが上がり続ける限り毎期繰り返す経営の定型業務です。だからこそ、根拠を作る部分を仕組みにしておく価値があります。

料金は月5万円(税別)。まずは試したい方には、お試し月3万円(税別)もご用意しています。

参考・出典

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