人件費が上がって潰れる会社が2.4倍に|賃上げの原資を「価格転嫁」と「省力化」で作る手順

AI CFO
数字で経営を見える化する財務番
「値上げを言い出せないまま、時給だけが上がっていく」
- 「時給を上げないと応募が来ない。でも、その分をどこから出すのかが分からない」
- 「値上げをお願いしたら、次から声がかからなくなるのではと思うと切り出せない」
- 「決算は黒字だったのに、通帳の残高は去年より減っている」
数字が苦手だと感じている社長ほど、この3つを同時に抱えています。ただ、手を止めているのは計算力ではなく、判断の根拠のほうです。「うちは値上げを言える立場なのか」「いくらまでなら投資してよいのか」を測る物差しがないから決めきれず、先送りになる。その間も人件費だけは上がっていきます。
賃上げは「払えるか、払えないか」の二択ではありません。原資をどこから作るかという設計の問題です。そして原資の出どころは3つしかありません。売る値段、人手に頼っている工程、外部から引ける資金です。
2026年上半期の倒産5,335件。「人件費の高騰」による倒産が2.4倍に
帝国データバンクが2026年7月8日に公表した2026年上半期(1〜6月)の倒産集計によると、件数は5,335件。前年同期の5,003件から6.6%増え、4年連続の増加となりました。資本金が「個人+1000万円未満」の倒産が3,875件・構成比72.6%と、2000年以降で最も高くなっています。理由別では「人手不足倒産」227件、「後継者難倒産」312件、「物価高倒産」556件が、いずれも過去最多を更新しました。
同じ7月8日に東京商工リサーチが公表した集計では、負債1,000万円以上の倒産が5,346件(前年同期比7.1%増)。従業員10人未満が構成比90.6%、中小企業基本法に基づく中小企業の構成比は半期では8年ぶりに100.0%でした。そして「人手不足」関連倒産237件(同37.7%増)のうち、人件費の高騰を原因とするものが120件、前年同期比140.0%増、およそ2.4倍に急増しています。(出典は記事末尾)
読み取るべきは、倒産したのが「特別に経営の下手な会社」ではないことです。増えている理由も景気の急変ではなく、人が採れない、後を継ぐ人がいない、上がったコストを価格に乗せられないという構造の側にあります。
一方で賃上げの相場は止まっていません。連合が2026年7月3日に公表した2026春季生活闘争の最終集計では、5,368組合の加重平均が16,400円・5.01%で3年連続の5%台。組合員300人未満の中小組合3,831組合でも12,866円・4.69%でした。**人件費が上がること自体は、すでに前提条件です。**動かせるのは、その原資をどこから作るかだけです。
賃上げの原資を作る、3つの打ち手
自社の転嫁率を計算して、54.2%と比べる
中小企業庁が2026年6月26日に公表した価格交渉促進月間(2026年3月)のフォローアップ調査によると、価格転嫁率は前回から約1ポイント増の54.2%。コスト要素別では原材料費55.7%、労務費50.0%、エネルギーコスト48.9%で、「価格交渉が行われた」割合は90.7%に達しています。
まず自社の転嫁率を出してください。直近1年で増えたコストの総額のうち、いくらを販売価格に反映できたか。それだけで54.2%より上か下かという自社の位置が分かります。下回っていたなら、それは度胸の問題ではなく業界平均以下という事実です。とくに労務費は50.0%と3要素のうち最も転嫁が進んでおらず、賃上げ分の交渉余地が最も大きいのはここだと数字が示しています。
材料も増えています。同調査には、2026年8月上中旬に発注者ごとの評価を記載した「発注者リスト」を公表予定と明記されました。経済産業省は7月6日時点で「パートナーシップ構築宣言」の宣言企業数が10万社に到達したとも公表しています。取引先が宣言企業かどうかを確かめてから交渉に臨むだけでも、話の入り口は変わります。
人手に頼っている工程を、投資で置き換える
中小企業省力化投資補助金(一般型)第7回は2026年7月1日に申請受付が始まり、締切は7月31日17時です。補助上限は従業員数に応じて刻まれ、5人以下750万円、6〜20人1,500万円、21〜50人3,000万円、51〜100人5,000万円、101人以上8,000万円。補助率は中小企業が2分の1、小規模企業者・小規模事業者・再生事業者は3分の2で、大幅賃上げの特例を適用すると上限はそれぞれ1,000万円から1億円に引き上げられます。
賃上げと投資が別々の話として設計されていない点が重要です。人手に依存した工程を機械やシステムに置き換え、その分を賃上げに回す会社ほど条件が有利になります。申請にはGビズIDプライムの事前取得が必要で、第7回では生産性向上支援センター利用の加点新設などの変更点も公表されています。採択発表は11月中旬の予定。申請と同時に資金が入るわけではないので、支出と入金の時期は分けて資金繰り表に置いてください。
数字が出てくるまでの時間を縮める
転嫁率も投資判断も、手元の数字が古ければ決められません。フリー株式会社は2026年6月16日、自然言語の指示だけで売上レポート作成・経費申請確認・打刻修正などの定型業務を代行するAIエージェントを約10分で作成できる「freee AIアシスタント」の提供を開始しました。訪問介護の一法人で1人あたり月30分かかっていた経費精算作業が2分に短縮された事例を示しています。
意味は、経理が楽になることだけではありません。月次が締まるのが翌月下旬から翌月上旬に変われば、値上げ交渉も投資判断もそのぶん前倒しになります。財務の打ち手は、早く出した人から効きます。
Before / After
Before: 値上げは「言えそうな相手」にだけ感覚で持ちかけている。自社の転嫁率は計算したことがない。補助金は締切を過ぎてから存在を知る。月次が出るのは翌月下旬で、気づいたときには資金が減っている。
After: 転嫁率を数字で把握し、54.2%・労務費50.0%という物差しと比べて交渉の相手と順番を決められる。補助金は締切とID準備から逆算して予定表にある。月次は翌月上旬に出る。賃上げが「耐えるもの」から「原資を設計するもの」に変わります。
よくある失敗と、避け方
- 「値上げを言えば取引を失う」と決めつけて交渉しない → 価格交渉が行われた割合は90.7%。まず自社の転嫁率を出し、54.2%と比べるところから始める
- 補助金を「安く買える制度」として捉える → 採択発表は11月中旬の予定。申請から採択、実行までの時間差を資金繰り表に反映しないと、採択されても動けない
- 賃上げと省力化投資を別々の議題にする → 大幅賃上げの特例で補助上限が変わる設計。賃上げ計画と設備投資の計画は同じ会議で決める
- 人手不足を「採用の問題」としてだけ扱う → 人件費の高騰による倒産は前年同期比140.0%増。採用の前に、その人手が本当に必要な工程かを見直す
こんな社長に向いています
- 直近1年で人件費が上がったが、販売価格に反映できていない
- 自社の価格転嫁率を計算したことがない
- 補助金の締切を、過ぎてから知ることが多い
- 月次の数字が出るのが翌月下旬以降になっている
- 賃上げの原資について、社内で具体的に話し合ったことがない
ひとつでも当てはまるなら、いま手をつける価値があります。倒産の理由が景気ではなく構造にある以上、放っておいて改善する項目はひとつもありません。
数字が苦手なままでも、原資は設計できる
AI CFOは、この一連の作業に伴走します。自社の転嫁率を計算して54.2%と比べ、交渉すべき取引先を並べる。補助上限と補助率から投資できる金額の上限を先に出す。採択までの資金の出入りを資金繰り表に落とす。月次が出るまでの手順を洗い出し、どこをAIに任せられるかを整理する。どれも専門用語ではなく、社長の言葉で進めます。
数字が読めるようになる必要はありません。必要なのは、判断できる形に数字が並んでいることです。料金は月5万円(税別)。まずは試したい方には、お試し月3万円(税別)もご用意しています。
参考・出典
- 帝国データバンク:2026年上半期の企業倒産集計(5,335件、人手不足・後継者難・物価高倒産が過去最多)
- 東京商工リサーチ:2026年上半期の全国企業倒産状況(5,346件、中小企業構成比100.0%)
- 経済産業省・中小企業庁:価格交渉促進月間(2026年3月)フォローアップ調査結果(価格転嫁率54.2%)
- 日本労働組合総連合会(連合):2026春季生活闘争 第7回(最終)回答集計結果(5.01%)
- 経済産業省:「パートナーシップ構築宣言」の宣言企業数が10万社に到達
- 中小企業省力化投資補助金 事務局:一般型 第7回公募スケジュール
- 補助金ナビ:省力化投資補助金(一般型)第7回公募のスケジュールと変更点
- フリー株式会社:「freee AIアシスタント」提供開始