同じ「中小企業」でも景況判断の符号が逆|小企業▲23.3・20人以上2.7から決める、待たない資金繰り

AI CFO
数字で経営を見える化する財務番
「景気は持ち直しているらしいけど、うちには来ていない」
「ニュースでは景気が持ち直していると言う。でも、うちの通帳はそう見えない」
「同業の社長に聞くと、そんなに悪くないと言う。うちだけ取り残されている気がする」
「売上は少し戻った。なのに手元の現金は増えない」
財務のご相談では、この3つがほぼセットで出てきます。気のせいではありません。同じ「中小企業」という言葉の中で、規模によって景況感の符号が分かれているからです。
小企業の業況判断DIは▲23.3、従業員20人以上は2.7|日本政策金融公庫の最新調査
2026年7月27日、日本政策金融公庫総合研究所が「全国中小企業動向調査結果(2026年4-6月期実績、7-9月期以降見通し)」を公表しました(出典は記事末尾)。この調査は2つの層を分けて集計しています。
- 小企業(原則従業者20人未満)……同公庫取引先10,000企業を対象、有効回答6,051企業(回答率60.5%)
- 中小企業(原則従業員20人以上)……取引先13,834社を対象、有効回答5,236社(回答率37.8%)
結果は次のとおりです。
- 小企業の業況判断DIは▲23.3(前回比+3.1)。マイナス幅は縮小したものの、来期はマイナス幅が拡大する見通し
- 小企業の売上DIは▲11.0(同+4.9)、採算DIは▲11.4(同+4.8)、資金繰りDIは▲19.9(同+5.1)
- 従業員20人以上の中小企業の業況判断DIは前期から低下して2.7、売上DIは上昇して15.3
景況判断も分かれ、小企業は「持ち直しの動きに足踏み」、中小企業は「持ち直しの動きがみられる」です。
社長にとって何が変わるか。第一に、「マイナス幅が縮んだ」は「良くなった」ではありません。 +3.1改善しても▲23.3はマイナスのままで、来期は悪化の見通しです。第二に、従業員20人以上の景況を伝えるニュースを、そのまま自社の前提には使えません。 「そのうち景気が戻れば楽になる」という前提が、いちばん通用しにくい層にいるということです。
下期の計画は「戻る前提」ではなく、「戻らない前提」で組み直します。
待たずに手を打つ、3つの順番
1. 資金繰りを「月次」から「週次」に切り替える
資金繰りDIが▲19.9ということは、「楽になった」より「厳しくなった」と答えた小企業のほうが多いということです。月に一度、試算表が出てから資金を確認するのでは遅すぎます。
やること自体は難しくありません。入金予定と出金予定を、週単位で先の13週分だけ並べる。 それだけで、どの週に現金が薄くなるかが見えます。粗くて構いません。精度より頻度です。
ここはAIが引き受けはじめている領域です。フリー株式会社は2026年6月16日、自然言語の指示だけで売上レポート作成・経費申請確認などの経理・労務・販売・契約の定型業務を代行するAIエージェントを、専門知識不要・約10分で作成できる「freee AIアシスタント」の提供を開始しました。同社は事例として、訪問介護の一法人で1人あたり月30分かかっていた経費精算作業が2分に短縮されたとしています。「数字を集める作業」が社長の手から離れはじめたと捉え、空いた時間を判断に回してください。
2. 採算DI▲11.4を戻せるのは、値決めだけ
売上DI▲11.0に対して採算DI▲11.4。売上より採算のほうが悪い、つまり売っても残りにくい構造です。戻す手段は値決めと原価しかありません。
中小企業庁が2026年6月26日に公表した価格交渉促進月間(2026年3月)のフォローアップ調査(受注側中小企業30万社を対象にアンケートを実施し、69,625社から回答)では、価格転嫁率は前回から約1ポイント増の54.2%でした。コスト要素別では原材料費55.7%、労務費50.0%、エネルギーコスト48.9%。労務費はちょうど半分しか通っていない計算です。「価格交渉が行われた」割合は90.7%。交渉はしている、けれど通り切っていない状態です。なお同調査には、2026年8月上中旬に発注者ごとの評価を記載した「発注者リスト」を公表予定と明記されています。
AIの使いどころは、交渉そのものではなくその前の準備です。品目別の原価を組み直す、値上げ幅の根拠を1枚にまとめる、想定問答を先に潰しておく。下ごしらえの有無で、同じ交渉でも結果が変わります。
3. 人件費の上昇を、決まる前に織り込む
2026年7月28日、第75回中央最低賃金審議会が令和8年度の地域別最低賃金額改定の目安を答申し、厚生労働省が公表しました。目安はAランク54円、Bランク56円、Cランク56円。仮に目安どおり各都道府県で引き上げが行われた場合、全国加重平均は1,176円となり、上昇額は55円(昨年度は66円)、引き上げ率換算で4.9%(昨年度は6.3%)となります。
注意が2つあります。ひとつは、これがまだ「目安」だということ。 今後、各地方最低賃金審議会が調査審議のうえ答申し、各都道府県労働局長が地域別最低賃金額を決定します。就業規則や賃金表を今すぐ書き換える段階ではありません。
もうひとつは、上げ幅の目安が都市部より地方で大きいこと。 全都道府県がABCの3ランクに分けられ、現在Aランクは6都府県(埼玉・千葉・東京・神奈川・愛知・大阪)、Bランクが28道府県、Cランクが13県。目安額はAが54円、B・Cが56円です。
やるべきことは、一人あたりの時間単価に想定の上げ幅を掛けて、下期の粗利計画を先に引き直すことです。決まってから慌てるのと、決まる前に織り込むのとでは、値上げ交渉に使える時間が違います。
補足:締切は、機械的に諦めない
中小企業省力化投資補助金(一般型)第7回は2026年7月1日に受付が始まり、締切は7月31日17:00でした。補助上限は企業規模に応じ最大1億円です。
その締切と同じ日、中小企業庁は令和8年熊本地震の被害を受けた熊本県内の事業者を対象に、第7回の申請受付期限を8月14日頃まで延長すると発表しました。期限までの申請が難しい場合等の相談は、中小企業省力化投資補助事業コールセンター(ナビダイヤル0570-099-660/IP電話等03-4335-7595、平日9:30〜17:30)で個別に受け付けるとしています。
対象は熊本県内の被災事業者に限られますが、型は持ち帰れます。間に合わないと自分で判断した時点で、事務局に電話する。
Before / After
Before: 月次試算表が出てから資金を確認し、景気のニュースを見て「そのうち戻るだろう」と考えている。値上げは先送りし、最低賃金は決まってから対応する。補助金は締切を過ぎたら終わりだと思っている。
After: 13週先までの入出金が1枚で見え、現金が薄くなる週を事前に把握している。景況の数字は自社と同じ規模の層で確認する。原価と値上げ根拠は先に作ってあり、交渉の時期を自分で選べる。人件費の上げ幅は下期計画に織り込み済み。締切が迫った制度は、諦める前に事務局へ確認する。
よくある失敗と、避け方
- 「マイナス幅が縮んだ」を「良くなった」と読む → 符号と方向は分けて見ます。小企業の業況判断DIは▲23.3で前回比+3.1。マイナスのままで、来期は拡大の見通しです
- AIを入れれば資金繰りが改善すると期待する → AIが減らせるのは「数字を集める時間」です。値決め・支払条件・回収サイトを決めるのは社長の仕事で、代われません
- 締切に間に合わないと自己判断して補助金を諦める → 制度によっては事務局が個別に相談を受け付けます。まず問い合わせる
- 最低賃金の目安を確定額として賃金表を書き換える → まだ目安の答申段階で、決定するのは各都道府県労働局長です。数字は計画に織り込み、規程の改定は決定を待ちます
こんな社長に向いています
- 従業員20人未満で、景気回復の実感がまったくない
- 売上は戻ってきたのに、手元の現金が増えていない
- 値上げの必要は分かっているが、根拠資料を作る時間がない
- 最低賃金の引き上げが下期の利益にいくら効くか、まだ計算していない
- 資金繰りを月に一度、試算表が出てから確認している
ひとつでも当てはまるなら、いま手を打つ価値があります。数字が動いてからでは打てる手が減ります。
AI CFOがやること
AI CFOは、13週資金繰り表の型づくり、品目別の原価の組み直し、値上げ交渉の根拠資料づくり、人件費の上昇を織り込んだ下期計画の試算まで伴走します。会計ソフトの入れ替えを迫るものではありません。いま使っている帳簿とExcelのまま、社長が判断に使える形に整えるところから始めます。
「数字が苦手」は欠点ではなく、数字を読む時間が取れていないだけです。業況判断DIが▲23.3で来期も下を向く見通しでも、値決め・支払条件・投資の順番は社長が決められる変数です。
料金は月5万円(税別)。まずは試したい方には、お試し月3万円(税別)もご用意しています。