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財務・資金繰り

「補助上限は最大5億円」に反応する前に|自社が乗る土俵と、上限か補助率かの二択

AI CFO

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数字で経営を見える化する財務番

「5億円出るらしい。うちも取れないだろうか」

補助金の相談で最初に出るのは、この3つです。

  • 「設備投資に5億円出る補助金があると聞きました。うちも申請できませんか」
  • 「上限も補助率も上がる特例があると聞き、両方使う前提で計画しています」
  • 「制度の名前は聞きますが、うちが応募できるのか分かりません」

共通するのは、金額の大きさから話が始まっていることです。止めているのは書類の多さではありません。自社がどの制度の土俵に乗るのかを、売上・従業員数・投資額という数字で線引きしていないことです。線引きが先にあれば、応募できない制度に時間を使わずに済みます。逆に後回しだと、見出しの金額に合わせて事業計画のほうを膨らませることになります。資金繰りにとって、いちばん危ない順番です。

中小企業庁が8月20日、成長加速化補助金3次公募の要領を公開しました

中小企業庁が2026年8月20日、中小企業成長加速化補助金の3次公募の公募要領を公開しました。将来の売上高100億円を目指す中小企業の大胆な設備投資を支援する制度で、補助率は1/2以内、補助上限額は最大5億円です。(出典は記事末尾)

ただし、要件を並べると輪郭が見えます。

  • 対象は、売上高10億円以上100億円未満の中小企業者
  • 補助対象経費のうち、投資額が1億円以上(税抜き)であることなどが要件
  • 「売上高100億円宣言」が必要
  • 申請受付期間は2026年9月29日(火)から10月29日(木)15:00まで

5億円という数字は、売上10億円以上の会社が1億円以上を投じる前提で置かれた上限です。売上高10億円未満の会社は、そもそも対象外です。ここを先に確認すれば、要領を読み込む時間を使わずに済みます。

土俵に乗る規模なら、話は変わります。投資額1億円以上という条件から逆算すると、単発の機械更新では届きません。複数年に分けて考えていた設備計画を、1本にまとめる発想が要ります。受付開始は9月29日。いまは計画を組み替える時間が残っています。

「上限を上げる」と「補助率を上げる」は、同時には使えません

もうひとつ、8月に動いた制度があります。中小企業省力化投資補助金(一般型)第8回の公募要領で、資金計画に直結する特例が2種類あります。(出典は記事末尾)

ひとつは、大幅賃上げに係る補助上限額引上げ特例。申請枠の上限に、従業員規模に応じて上乗せされます。従業員5人以下で250万円、6〜20人で500万円、21〜50人で1,000万円、51〜100人で1,500万円、101人以上で2,000万円。上乗せ後の上限は、順に1,000万円・2,000万円・4,000万円・6,500万円・1億円です。

もうひとつは最低賃金引上げに係る補助率引上げ特例で、中小企業の補助率を2/3に引き上げます。

問題は、この2つを足し算できない点です。第8回の公募要領は、賃上げ特例について「最低賃金引き上げに係る事業者、補助金額の上限額に達しない場合、再生事業者、常勤従業員がいない場合は、引き上げ不可」と明記しています。「上限1億円で、補助率2/3」という両取りの前提で試算すると、必ず外れます。

同じ構造はほかの制度にもあります。中小企業基盤整備機構が2026年8月14日に1.2版へ改訂した「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」第1回公募要領も、革新的新製品・サービス枠について「地域別最低賃金引上げ特例を申請する事業者は賃上げ特例を適用できない」と明記しています。

上限と補助率は、どちらを取りに行くかの二択です。賃金水準と投資額のどちらが効くかで答えは変わります。

数字が苦手でも決められる、3つの手順

1. 「乗る土俵」を、売上・従業員数・投資額の3つで線引きする

制度ごとに線の引かれ方が違います。成長加速化補助金は売上高10億円以上100億円未満・投資額1億円以上という線。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(1.2版)は、枠と従業員数で上限が決まります。革新的新製品・サービス枠(下限100万円)は従業員1〜5人750万円、6〜20人1,000万円、21〜50人1,500万円、51人以上2,500万円で、補助率は中小企業1/2・小規模企業者等2/3。新事業進出枠とグローバル枠(いずれも下限750万円)は1〜20人2,500万円、21〜50人4,000万円、51〜100人5,500万円、101人以上7,000万円です。

売上・従業員数・想定投資額を書き出せば、応募できる制度は絞られます。制度を調べる前に、まず自社の数字を1行で書く。

2. 二択は「率」ではなく「手取りの金額」で比べる

賃上げ特例は、上限額に達しない場合は引き上げ不可と要領にあります。裏を返せば、上限に届かない投資規模の会社は、そもそも上乗せの対象にならないということです。効くのは補助率のほうです。

補助率1/2と2/3の差は、補助対象経費の6分の1にあたります(2/3から1/2を引くと1/6)。上限額に届かない範囲であれば、仮に補助対象経費が1,200万円なら600万円と800万円で、差は200万円。上限の上乗せ額と比べるのは、この実額です。制度の見出しではなく、自社の投資額を入れた金額で並べる。

3. 効果は「時間」で見込み、コスト削減を先に約束しない

フォーバルGDXリサーチ研究所が2026年8月21日に公表した「BLUE REPORT[9月号]」は、全国の中小企業経営者1,653人が対象です。AIの仕組みや活用メリット、または概要を認知している企業への設問として、「既に業務で活用している」36.9%、「導入に向けて検討・試験運用している」20.1%。一方、仕組みやメリットを深く理解し自社業務への適用を把握している企業は22.7%にとどまります。

注目したいのは、導入済み企業が答えた効果の内訳です(「とても」「やや」の合計)。業務効率化が91.7%、工数削減が86.5%。これに対してコスト削減は60.1%、他社からの評価は40.3%でした。効果は社内の時間に強く出て、コストや社外からの評価にはまだ届いていない。 事業計画に「AI導入で経費が下がる」と先に書けば、社内では失望が先に来ます。空いた時間を何に振り向けるかまで、社長が設計してください。

未導入企業の障壁の上位は「専門知識・ノウハウを持つ人材がいない」53.7%、「どの業務に使えるかわからない」47.9%。それでも今後推進する意向は83.2%です。足りていないのは意欲ではなく、順番です。

Before / After

Before: 補助金の話は金額の大きい制度から入り、要領を最後まで読んでから対象外だったと分かる。特例は上限も補助率も使える前提の試算なので、採択されても手元に入る額が計画とずれる。

After: 自社の売上・従業員数・想定投資額が1行で書けているので、応募できる制度が最初に絞れる。上限か補助率かは実額で比較して決める。AI導入の効果は「時間」で見込み、その使い道まで計画に書いてある。

よくある失敗と、避け方

  • 上限額の大きさで制度を選ぶ → 成長加速化補助金の対象は売上高10億円以上100億円未満。金額ではなく要件から見る
  • 「上限も補助率も上がる」前提で資金計画を組む → 省力化投資補助金(一般型)第8回は両特例を併用できません。どちらを取るかを先に決める
  • 賃上げ特例の上乗せを織り込んで着地額を出す → 補助金額の上限額に達しない場合は引き上げ不可と要領にあります。上限に届く投資額かを先に確認する
  • 補助金でAIを入れ、経費削減を社内に約束する → 導入済み企業の効果は業務効率化91.7%に対しコスト削減60.1%。効果は時間で見込む

こんな社長に向いています

  • 補助金の話は聞くが、自社が対象かを判断できていない
  • 設備投資の計画が、年度ごとの単発になっている
  • 特例を両方使える前提で、着地額を見込んでいる
  • AI導入の効果を社内にどう説明するか決めかねている
  • 申請書を書く時間が、月末の資金繰りと重なり取れない

ひとつでも当てはまるなら、要領を読む前に、自社の売上・従業員数・想定投資額を1行にすることから始めてください。

「土俵に乗るか」の線引きと、着地額の試算をAI CFOが引き受けます

AI CFOは、公募要領の要件と自社の数字を突き合わせ、応募できる制度とできない制度を仕分けます。特例が二択の制度では、上限を取る場合と補助率を取る場合の着地額を並べて出します。採択後の入金時期と支出時期のずれも、資金繰り表に載せます。社長は、出てきた金額を見て決めるだけです。

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参考・出典

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