食品主要195社の9月値上げは4,923品目|仕入の上昇を、粗利で吸い込まないための値決めと資金繰り

AI CFO
数字で経営を見える化する財務番
「値上げの連絡は毎月来るのに、うちの売値は3年変えていない」
この夏、財務のご相談で最も多く聞いた言葉です。
- 「仕入先からの値上げ通知は次々に届く。でも、うちからお客様に値上げを切り出せない」
- 「売上は前年並みなのに、手元の現金だけが細っていく」
- 「値上げを言えば取引を切られるかもしれない。それが怖い」
共通しているのは、値上げを切り出すための「自社の数字」が手元にないことです。
止めているのは度胸ではなく、材料
利益は、売上が落ちたときよりも、原価と売値の差が静かに縮んだときに消えます。 売上高は毎月見ていても、「どの商品で、どの取引先で、粗利がいくら減ったか」を言える会社は多くありません。交渉で効くのは気合ではなく、「この品目の仕入単価が2年で何円上がり、粗利率が何ポイント落ちたか」という一枚です。それがないから、値上げの話は社長の胸にとどまります。
食品主要195社の2026年9月値上げは4,923品目、単月として今年最大(出典は記事末尾)
帝国データバンクの「食品主要195社」価格改定動向調査によると、主要な食品メーカー195社における家庭用を中心とした2026年9月の飲食料品の値上げは4,923品目、値上げ1回あたりの平均値上げ率は月平均11%でした。単月の値上げ品目数としては2026年で最も多く、前年9月の1,467品目から約3倍にあたります。
分野別では「調味料」が1,959品目で最も多く、「加工食品」1,848品目、「酒類・飲料」466品目、「乳製品」278品目、「菓子」272品目と続きます。2026年の値上げ品目数は1〜11月までの判明分の累計で1万9,083品目に達し、年間2万品目超えが確実で、前年の2万609品目を上回る見込みとされています。押し上げ要因は、中東情勢の悪化による原油・ナフサ高、人件費、物流費、円安です。
食品を扱っていない会社にも、この波は包材・輸送・外注の単価という形で回ってきます。大手が年2万品目規模で値上げを通している事実は、自社の値上げを説明する材料にもなります。
仕入価格DIは44.1、販売価格DIは22.9(出典は記事末尾)
日本政策金融公庫総合研究所の「中小企業景況調査(2026年8月)」が、その差をはっきり示しています。調査時点は2026年8月中旬、対象は三大都市圏の同公庫取引先900社で、有効回答は574社(回答率63.8%)です。
2026年8月の販売価格DIは1.7ポイント低下して22.9、仕入価格DIは5.1ポイント低下して44.1。ともに前月より下がりましたが、水準の差は21.2ポイント残ります。売上げDIはマイナス幅が0.2ポイント縮小して▲1.9、今後3カ月(8月〜10月)の売上げ見通しDIは7.3ポイント上昇して6.6、黒字企業割合から赤字企業割合を引いた値も8.6ポイント上昇して35.1と、明るい数字が並びます。それでも利益額DIだけは1.3ポイント低下して▲1.2でした。 売上の先行きは上向いたのに、利益は上向かない。ここに仕入と売値の開きが表れています。
帝国データバンクの「価格転嫁に関する実態調査(2026年7月)」でも、価格転嫁率は39.9%と、前回2026年2月調査の42.1%から2.2ポイント低下して再び4割を下回りました。全国2万2,350社を対象とした調査で、有効回答は1万518社(回答率47.1%)。「10割すべて転嫁できている」企業は3.4%にすぎません。規模別では大企業41.6%、中小企業39.7%、小規模企業38.3%と、小さいほど低くなります。
なお2026年9月は「価格交渉促進月間」です。経済産業大臣が2026年8月27日付で関係事業者団体へ実施の周知を依頼しており、今回から官公需の取引実態を把握する調査が新設されます。9月下旬以降、受注側の中小企業30万社を対象とする調査などが行われ、結果に基づいて発注者ごとの取組状況が公表される予定です。値上げを切り出すなら、国が交渉を後押ししている月に合わせるのが理にかなっています。
経済産業省が令和9年度の税制改正要望を公表。ただし「要望」段階(出典は記事末尾)
2026年8月31日、経済産業省が令和9年度の概算要求とあわせて税制改正要望を公表しました。中小企業関連では、事業承継税制の抜本的な見直し・強化、中小企業向け賃上げ促進税制の拡充(今後5年間を重点期間と位置づけ、「全雇用者の給与総額」や賃上げ水準の要件等を抜本的に見直す)、中小企業経営強化税制の拡充、中小企業軽減税率および中小企業投資促進税制の見直しの上での延長、の4点が挙がっています。分野横断では、事業ポートフォリオ転換・強化促進税制の創設と、減価償却資産の取得価額基準の見直し(10万円未満の全額損金算入等の基準額を物価上昇を踏まえて見直す)も掲げられました。
読み違えが多いので、はっきり書きます。これはあくまで要望であって、決定ではありません。 内容が固まるのは年末の与党税制改正大綱です。いま必要なのは減税を当て込んだ計画ではなく、「要望どおりに決まったら、うちはどれに乗れるか」を洗い出し、年末に即断できる状態にしておくことです。承継も設備投資も、決まってから準備を始めると1年遅れます。
数字が苦手な社長でも、今月から動かせる3つ
1. 粗利が消えている場所を、商品別・取引先別に月次で出す
全社の粗利率では手を打てません。粒度を「商品別」「取引先別」まで落として前年同月と比べる。最初の1か月は手作業で、上位20品目・上位10社だけで十分です。ここで「値上げを最初に伝える相手」が決まります。
2. 請求まわりのAIで、原価の変化を見落とさない
仕入単価の上昇は、たいてい請求書の中で静かに起きています。ラクスは2026年8月19日、請求書受領システム「楽楽請求」に「自動照合オプション」を提供開始したと発表しました。発注書や納品書などの請求根拠データと受領した請求書を自動で紐付けて金額を照合し、総額が一致しない請求書だけを特定できます。ただし対象プラン・追加費用などの提供条件および価格の記載はないため、適用条件は販売元に確認してください。
3. 導入費用は、最新版の公募要領で確認してから決める
「デジタル化・AI導入補助金2026」は2026年8月28日付で、通常枠・インボイス枠(インボイス対応類型/電子取引類型)・セキュリティ対策推進枠・複数者連携枠の公募要領が改訂されました。通常枠では審査事項に「セキュリティ対策を進めているか」が追加されました。AIツールを入れる補助金の審査で、自社の情報管理そのものが見られるということです。申請するなら、最新版の公募要領を自分で開くところから始めてください。
Before / After
Before: 仕入先の値上げ通知はファイルに綴じるだけ。売値は数年前のまま。月次試算表は締めが翌月下旬で、見るころには手が打てない。値上げの根拠が「なんとなく苦しい」しかなく、毎月先送りになる。
After: 上位20品目・上位10社の粗利率が毎月出て、前年同月との差が一目で分かる。値上げを伝える順番が数字で決まり、「原価がこう動いたので、この幅で」と説明できる。税制改正の要望は一覧にしてあり、年末に大綱が出た日に承継と設備投資の判断へ移れる。
よくある失敗と、避け方
- 全商品を一律◯%値上げする → 粗利率が落ちた順に幅を変える。一律は、利益の出ている商品で失注を招き、赤字商品を赤字のまま残す
- 税制改正の「要望」を「決定」として計画に入れる → 決まるのは年末の与党税制改正大綱。要望段階では、動ける準備までにとどめる
- 値上げを一度伝えて終わりにする → 原価は動き続ける。見直しの周期を先に決め、次の交渉時期をカレンダーに置く
- ツールを入れれば数字が出ると思う → 先に「毎月見る数字」を3つに絞る。見る数字が決まっていないほど、機能の多いツールは使わなくなる
こんな社長に向いています
- 仕入先の値上げ通知が続いているが、自社の売値をどうするか決めきれていない
- 売上は落ちていないのに、資金繰りが苦しくなってきた
- 商品別・取引先別の粗利を、月次で見られていない
- 事業承継や設備投資を考えているが、動く時期を決められない
- 補助金を使いたいが、公募要領を読む時間がない
ひとつでも当てはまるなら、まず1か月分の粗利を分解してみてください。
AI CFOは、毎月の試算表や請求データから「粗利がどこで消えたか」を言葉にし、値上げを伝える順番と幅の案を出し、税制改正や補助金の動きを「うちに関係あるもの/ないもの」に仕分けして、判断が必要な日にだけ社長の前に持ってきます。数字が苦手な社長ほど、この伴走は効きます。
料金は月5万円(税別)。まずは試したい方には、お試し月3万円(税別)もご用意しています。