自動車運転者を使う事業場、立入調査の81.2%で法令違反|監督署が来る前に、労働時間の記録を整える

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「うちは、ちゃんと払っているつもりなんですが」
「配送は自社便でやっている。日報も出させている。ただ、あのドライバーが先月何時間拘束されていたかと聞かれたら、すぐには答えられない」
「残業代の計算は、昔からのやり方をそのまま使っている。誰が作った式なのか、もう社内に分かる人がいない」
「一人辞めると、残った人の時間が伸びる。伸びるからまた一人辞める。ここから抜けられない」
この3つは、ほとんど同じ会社から同時に出てきます。別々に見えて、一本の線でつながっています。
会社を止めているのは、人手不足そのものではありません。止めているのは、社内の誰も労働時間の実態を答えられない状態です。実態が分からなければ、残業代が合っているかも分からない。原因が特定できないまま人が入れ替わり、その状態は外から指摘されて初めて表に出ます。
監督指導を受けた4,123事業場のうち、81.2%で法令違反(2026年8月6日公表)
厚生労働省は2026年8月6日、令和7年に労働基準監督署等がトラック・バス・タクシーなど自動車運転者を使用する事業場に対して行った監督指導の状況を公表しました。
立入調査が行われたのは4,123事業場。うち労働基準関係法令違反が認められたのは3,346事業場、81.2%です。拘束時間などを定めた改善基準告示への違反は2,188事業場(53.1%)、重大・悪質な違反による送検は67件でした。(出典は記事末尾)
見ていただきたいのは、違反の中身です。主な法令違反は次の3つでした。
- 労働時間:39.3%
- 割増賃金の支払:19.7%
- 労働時間の状況の把握:6.3%
上位を占めているのは、危険な運転でも無理な配車でもありません。時間を記録すること、記録から賃金を計算することです。多くは「悪いことをした」というより、自社の状態を正しく数えていなかった結果です。
前提は正確に押さえてください。母数は日本のすべての会社ではなく、自動車運転者を使用する事業場のうち、令和7年に監督指導が入った4,123事業場です。世の中の8割が違反しているという意味ではありません。ただ、自社便を持つ会社にとっては「指摘されてから直す」では遅い、という水準がここに出ています。
辞めて終わるのではなく、辞めて会社が終わる段階に入っている
後回しにできない理由は、行政の指摘だけではありません。
東京商工リサーチが2026年8月5日に公表した集計では、2026年7月の全国企業倒産(負債1,000万円以上)のうち「人手不足」関連倒産は63件で、前年同月比40.0%増、7月として過去最多でした。要因別では「人件費高騰」が36件(前年同月比111.7%増、2.1倍)で過去最多、「従業員退職」が19件。資本金1千万円未満が40件と、全体の63.4%を占めます。
帝国データバンクの分析では、人手不足倒産のうち従業員や経営幹部の退職が要因となった「従業員退職型」倒産は2026年1-7月で83件。前年同期の74件から9件・約12.2%増え、2022年以降5年連続の増加です。業種別はサービス業22件(全体の26.5%)が最多、建設業20件、運輸・通信業12件(負債1,000万円以上・法的整理の集計)。
辞める人が出ること以上に危険なのは、辞めた分の時間が残った人に乗ることです。 乗った時間は記録されないまま増え、賃金計算とズレ、不満になり、次の退職を呼びます。監督署に指摘される話と人が辞め続ける話は、同じ穴から出ています。
監督署が来る前に、社長が自分で点検する3つ
1. 労働時間の記録を「一本」にする
日報、タイムカード、運行記録、シフト表。この4つが別々にあり、突き合わせたことがない会社は少なくありません。違反項目の「労働時間の状況の把握」は、まさにここです。
まず、どれを正とするかを社長が決めてください。そのうえで、入退社手続きや雇用契約書といった労務書類を紙から外していきます。弥生は2026年7月29日、クラウド労務管理サービス「弥生労務 Next」の単体提供を開始しました。いま使っている給与システムを続けながら労務業務のデジタル化を進めたい中小企業向けのサービスです。給与計算を入れ替えなくても、記録の置き場所を一本にする入口はあります。
2. 割増賃金の計算根拠を、他人が見て追えるようにする
違反の19.7%は割増賃金の支払でした。多くは悪意ではなく、計算式が引き継がれていないことが原因です。
OpenAIは2026年5月7日、Microsoft ExcelとGoogleスプレッドシート向けのChatGPTアドインを全ユーザーに一般提供したと報じられました。シートを離れずに、複雑な数式を文章の指示から作らせたり、条件を変えた試算をさせたりできます。
使いどころは、新しい式を作らせることではありません。いま動いている式にAIを説明させ、社長が理解できる言葉に翻訳させることです。単価の根拠と割増率は人が決める。AIは検算と説明の相手であって、支払いの責任を引き受ける相手ではありません。
3. 拘束時間は「走った後」ではなく「計画の段階」で守る
改善基準告示への違反が53.1%という数字は、月末に集計して初めて超過に気づく運用がまだ残っていることを示します。走らせてから足りないと分かっても、もう直せません。
common株式会社は2026年7月9日、集荷・配送のルート計画を自動作成する「ルートコンパスAI」の提供を開始しました。複数の集荷・配送先や、自社車両と傭車の混在といった条件下で、ドライバーの労働時間に関する法令を守りながら輸送コストが最小になる計画を数十秒で作るもので、熟練担当者が3時間かけていた日次計画が対象です。
要は、上限を守る作業を人の記憶から計画の側へ移すということです。配車をAIに任せない会社でも、「この計画は上限に対して何時間の余裕があるか」を組む前に出す手順は、今日から入れられます。
Before / After
Before: 労働時間は日報とタイムカードとシフト表に分散し、突き合わせは月末に手作業。残業代は前任者から引き継いだ式で計算しているが、根拠を説明できる人がいない。誰かが辞めるたび、残った人の時間が静かに増える。
After: 記録は一本に集約され、先月の一人あたり拘束時間を社長がその場で言える。割増賃金の式は何をしているか説明でき、単価と割増率は社長が決めている。配車計画は上限に対する余裕とセットで出てくる。退職が出ても、時間がどこに寄るかが先に見える。
よくある失敗と、避け方
- 実態を変えずに、記録だけ整える → 記録を綺麗にすることが目的化すると、書類は収まって現場だけが苦しくなります。一本化した最初の月は必ず「増えた実態」が出ます。それを見て仕事の総量を減らす判断まで行って、初めて片付きます。
- AIに計算させて、根拠を確認しない → 自社の単価・割増率・手当の扱いを決めるのは社長です。出てきた数字をそのまま支払いに使わず、根拠の一文を社内に残してください。
- 人が辞めてから労務を整え始める → 従業員退職型の倒産が5年連続で増えているのは、辞める瞬間ではなく、その前の数年で仕組みを作らなかった結果です。整えられるのは、まだ人がいるうちだけです。
- いきなり作り込もうとする → 株式会社Leachが2026年5月18日に公開した従業員300名以下対象の調査では、最大の障壁は「何から始めればいいか分からない」が62%で首位でした。同調査は、月額5万円程度の生成AI顧問から始めた企業のほうが、いきなりシステム開発に着手した企業より定着・成功率が約3倍高いとしています。
こんな社長に向いています
- 自社便やドライバー、配送要員を抱えている
- 先月の一人あたりの残業時間を、その場で答えられない
- 残業代の計算式を作った人が、もう社内にいない
- 退職が出るたび、残った人の負担が増えている自覚がある
- 労務を整えたいが、給与システムの入れ替えまではやりたくない
ひとつでも当てはまるなら、監督署が来る前に打てる手が、まだ十分に残っています。
AI CHROができること
AI CHROは、人事の理想論を語る役ではありません。日報とタイムカードを突き合わせ、記録がどこで途切れているかを特定し、割増賃金の計算根拠を社長の言葉に翻訳し、退職が出たときに時間がどこへ寄るかを先に示す。この地味な作業を毎月続ける相手です。
労務は、指摘されてから直すと高くつきます。まだ人がいて、まだ調査が来ていない今が、いちばん安く整えられるタイミングです。
料金は月5万円(税別)。まずは試したい方には、お試し月3万円(税別)もご用意しています。