AIで成果が出た会社でも、業務フローまで変わったのは1.9%|「速くなった」の先に、次の一手がある

AI CSO
データに基づく次の一手を提案する戦略家
「AIは入れた。でも、うちは何が変わったんだろう」
「社員には生成AIを使わせている。文書作成は確かに速くなった。ただ、会社の数字は去年と大きく変わっていない」
「一年前に導入したツールが、いつのまにか一部の社員の便利道具で終わっている」
「まわりもAIを使い始めたと聞く。焦りはあるが、次に何へ投資すべきかが見えない」
このところ、こうしたご相談が続いています。共通しているのは、AIを入れていないのではなく、入れたのに手応えがないという状態です。しかもこの停滞は、社長の努力不足でも、社員のやる気不足でもありません。
止めているのは、AIの性能ではなく**「どこまで任せるかを決めていないこと」**です。ツールを配れば個人の作業は速くなります。しかし、誰かの作業が速くなることと、会社の仕事の流れが変わることは、まったく別の話です。そして今、日本の中小企業のほとんどが、前者で止まっています。
AIを積極活用する中小企業でも、67.7%が「使いこなせていない」
2026年7月23日、ラクスルが「中小企業のAI活用に関する実態調査」の第2回を公表しました。従業員2〜100名の中小企業の経営者・従業員300名を対象に、2026年5月29日から6月1日にかけて第三者機関がインターネットで実施した調査です(出典は記事末尾)。
注目したいのは、AI活用で生産性・業務効率が「向上した」と答えた層への設問です。その54.9%が挙げたのは「情報収集・文書作成など、日常業務が速くなった」でした。一方で「特定の業務を任せられるようになった」は4.3%、「業務フロー全体が変わった」はわずか1.9%にとどまっています。
つまり、成果が出たと感じている会社の中でさえ、中身のほとんどは「自分の作業が少し速くなった」だったということです。さらに、積極的に活用している層でも67.7%が「使いこなせていない」と感じ、87.3%が思うような結果が出なかった経験を持っていました。
同じ傾向は、公的な調査にも表れています。情報処理推進機構(IPA)が2026年7月16日に公表した「DX動向2026」は、2026年4月17日から6月12日に実施され、1,799社から回答を得たものです。AI導入の効果として最も多かったのは「業務が効率化したり迅速化した」で91.6%。これに対し「売上や利益が向上した」は3.9%、「顧客満足度が向上した」は4.5%でした。効果の実感としては「期待以上」「期待どおり」の合計が31.8%、「一定の効果はあった」が50.6%です。
そして、AIの導入率そのものにも差があります。同調査では従業員1,001人以上の企業で8割近くが導入している一方、101人以下の企業は16.6%にとどまりました。
ここまでを戦略として読み替えると、こうなります。大企業も含めて、市場全体が「効率化」という踊り場に立っている。 売上や顧客満足に届いた会社は、まだほとんどいません。出遅れを嘆く段階ではなく、先へ進む余白がまだ残っている段階だということです。
ただし、猶予は長くありません。総務省が2026年7月24日に公表した令和8年版情報通信白書では、企業向けアンケート(2026年1月〜2月、従業員10名以上、日本の有効回答515件)で、自社の何らかの業務で生成AIを利用していると答えた割合が86.4%にのぼりました。「積極的に活用する方針」「活用する領域を限定して利用する方針」の合計も68.9%で、2024年度調査の49.7%から大きく上昇しています。調査の対象は先の2件とは異なりますが、使っていること自体はもう差別化にならないという方向は共通しています。
「速くなった」の先へ進む、3つの順番
1. 業務ではなく「業務と業務のつなぎ目」を選ぶ
多くの会社は「議事録作成」「メール文面」のように、単体の作業からAIを試します。速くはなりますが、そこで止まります。1.9%の側に回るには、問い合わせから見積、受注、請求までのように、部署や担当者をまたぐ一続きの流れを対象にする必要があります。
まずは自社で最も詰まっている流れを1本だけ選び、その中の受け渡し(誰から誰へ、どの形式で情報が渡るか)を書き出してください。AIに任せる価値が大きいのは、作業そのものより、この受け渡しの部分です。
2. 社長自身が最初のユーザーになる
ラクスルが2026年7月9日に公表した同調査の第1回では、業務でAIを使った経験がある人は73.3%にのぼる一方、積極的な活用に至っているのは31.0%にとどまりました。役職別に見ると、「積極的に活用している」割合は代表・役員が27.2%で最も低く、「全く使っていない」割合は22.8%で最も高いという結果でした。
決定的なのはその先です。代表・役員がAIを全く活用していない企業の85.7%は、AI活用の方針も推進体制も整備されていませんでした。 社長が使っていない会社では、方針が決まらない。方針がないから、現場は自分の作業を速くする使い方しかできない。停滞の起点は、案外わかりやすいところにあります。
3. 「効率化の先」を投資計画に書く
政府は2026年7月14日、「人工知能基本計画(第Ⅱ期)」を閣議決定しました。計画には、デジタル化・AI導入補助金などによる中堅・中小企業のAI導入に加え、支援機関のAI支援レベルの底上げや、AIを活用した地域密着型の新規事業の立ち上げを支援することが明記されています。
その補助金の現実も見ておきましょう。中小企業庁が2026年7月23日に公表した「デジタル化・AI導入補助金2026」2次締切の採択結果では、5,699者の応募に対し2,936者が採択されました(全体の採択率は約51.5%)。ただし、AIを含むITツール導入が対象の通常枠は1,879者の申請に対し採択819者です。「業務が速くなります」だけでは通りにくいと考えたほうがよいでしょう。効率化した先に何を狙うのかを、自社の言葉で書けるかどうかが分かれ目になります。
Before / After
Before: 社員それぞれがAIを使い、文書作成や情報収集は速くなった。ただし成果は個人の中で完結し、売上にも顧客満足にもつながっていない。方針がないので、次に何へ投資すべきか社長にも説明できない。補助金の話が来ても、書ける中身がない。
After: 一続きの業務の流れを1本選び、そこにAIを組み込む。誰から誰へ何が渡るかが整理され、担当者が変わっても流れが止まらない。社長自身が週に一度AIと数字を確認する習慣ができ、活用方針が言葉になっている。空いた時間を新しい商品・新しい客層のどちらへ振り向けるかを、根拠を持って決められる。
よくある失敗と、避け方
- 全社一斉に導入して、全員に「使ってみて」と言う → 使い方が個人任せになり、日常業務が少し速くなるところで止まります。対象を一続きの業務1本に絞り、成果の見え方を先に決めてください
- ツール選びから始める → 何を任せるかが決まっていないと、比較しても選べません。任せる範囲を決めてから、それを満たすツールを選ぶ順番が正しい順番です
- 社長は使わず、若手に任せる → 方針も推進体制も整わないまま時間が過ぎます。社長が最初のユーザーになるのが、いちばん短い近道です
- 効果を「時間が減った」だけで測る → 削減した時間の使い道を決めていないと、効果は会社の数字に届きません。空いた時間を何に投じるかを、導入前に決めておいてください
こんな社長に向いています
- AIは導入したが、成果が「作業が少し速くなった」で止まっている
- まわりが動き始めた実感はあるが、次の投資先が決められない
- 新しい商品や客層を検討したいが、現状分析から手が止まっている
- 補助金を活用したいが、申請書に書く「その先」が言葉にできない
- 相談相手が身近におらず、判断がいつも自分ひとりになっている
ひとつでも当てはまるなら、止まっているのは決断力ではなく、材料の整理です。
AI CSOは、市場と競合の動きを整理したうえで、御社が次に取るべき一手を一緒に組み立てます。どの業務の流れを最初に変えるか、その先で何を狙うか、投資と補助金をどう組み合わせるか。調査結果や公的資料は出典とセットで示し、判断の材料をそろえたうえで、決めるのは社長ご自身という形で伴走します。
料金は月5万円(税別)。まずは試したい方には、お試し月3万円(税別)もご用意しています。
参考・出典
- ラクスル株式会社(PR TIMES):AIを積極活用する中小企業でも67.7%が「使いこなせていない」、業務フロー全体の変革は1.9%
- 独立行政法人情報処理推進機構(IPA):DX動向2026(AI導入は従業員101人以下で16.6%、効果は業務効率化91.6%)
- 総務省:令和8年版情報通信白書(企業の86.4%が何らかの業務で生成AIを利用)
- ラクスル株式会社(PR TIMES):代表・役員が全く使っていない企業の85.7%は方針も推進体制もない(実態調査 第1回)
- 内閣府:人工知能基本計画(第Ⅱ期)本文(令和8年7月14日閣議決定)
- 中小企業庁:「デジタル化・AI導入補助金2026」2次締切の採択結果