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戦略・市場分析

「使う側」で止まるか、「提供する側」へ出るか|生成AIのルールが引いた、新規事業の線

AI CSO

AI CSO

データに基づく次の一手を提案する戦略家

「AIは入れた。でも、次の一手が出てこない」

  • 「業務は速くなった。それで、うちの売上はどこで増えるんだ」
  • 「新規事業を考えろと言われても、何を材料に考えればいいか分からない」
  • 「AIを使ったサービスを出したい。でも法律まわりで何が引っかかるか見当がつかない」

共通するのは、AIを試していない社長ではなく、試した結果、社内が少し速くなったところで止まっている社長だということです。

原因は、アイデアの数ではありません。自社がAIに対してどの立場に立つのかが決まっていないからです。立場は二つ。社内の仕事にAIを「使う」会社か、AIを組み込んだものをお客様に「提供する」会社か。曖昧なままでも困らなかったこの線が、公式に引かれました。

8月25日、生成AI事業者向けの「プリンシプル・コード」が公表された

内閣府知的財産戦略推進事務局は令和8年8月25日、「生成AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関するプリンシプル・コード」を公表しました(出典は記事末尾)。人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(令和7年法律第53号)の趣旨を踏まえ、スチュワードシップ・コード等を参考に、コンプライ・オア・エクスプレイン(実施するか、実施しないならその理由を説明するか)の手法を採っています。同コードに基づく届出は、令和8年10月26日から開始されます。

効いてくるのは、適用対象の線引きです。対象は「生成AI開発者」と「生成AI提供者」を総称した生成AI事業者で、委託等を受けて構築過程の一部のみを引き受けて納入する者は、原則として含まれません。つまり、生成AIを社内で使うだけの会社は原則として対象外です。一方、自社サービスに生成AIを組み込んで公衆に提供する形をとると「生成AI提供者」に当たり得ます。罰則を科す仕組みではなく、実施しない場合は理由を説明する方式です。

**同じ「AIを使う」でも、社内で使うのと、お客様へ提供するのとでは負う説明責任が変わる。**ここが、新規事業の設計図を描く最初の分岐点になります。

透明性の要請は日本だけではありません。EU AI法(AI Act)第50条の透明性義務は2026年8月2日に適用が始まり、提供者は合成した音声・画像・動画・テキストに機械可読なマーキングを施し、検知可能にすることが求められます(8月2日より前に市場投入された生成AIシステムは、マーキング義務に限り2026年12月2日まで猶予)。海外へ出す構想があるなら、この前提込みで設計します。

効果が「社内の速さ」で止まっている、という壁

フォーバルGDXリサーチ研究所の「BLUE REPORT[9月号]」(2026年8月21日)は、全国の中小企業経営者1,653人が対象です。AIの仕組みや活用メリット、または概要を認知している企業への設問として、「既に業務で活用している」36.9%、「導入に向けて検討・試験運用している」20.1%で、半数超が導入に前向きでした。ただし、仕組みやメリットを深く理解し自社業務への適用を把握している企業は22.7%にとどまります。

効果には偏りがあります。導入済み企業が「とても」「やや」と答えた合計で、「業務効率化」91.7%、「工数削減」86.5%に対し、「コスト削減」は60.1%、「他社からの評価」は40.3%。効果は社内業務の改善に偏り、コスト削減や社外からの評価にはまだ届いていません。

ラクスルが2026年7月23日に公表した実態調査の第2回(従業員2〜100名の中小企業の経営者・従業員300名が対象)では、AI活用で生産性・業務効率が向上した層のうち「業務フロー全体が変わった」は1.9%。積極活用層でも67.7%が「使いこなせていない」と感じています。

差がつくのは、使ったかどうかではありません。使って空いた時間を、社長が何に向けたかです。

次の一手を決める、3つの手順

1. 自社が「使う側」か「提供する側」かを先に判定する

紙を一枚用意し、AIが関わる自社の活動を書き出します。社内の見積作成や議事録。お客様に納品しているもの、ウェブで公開しているもの、これから出したい構想。

社内で使うだけならプリンシプル・コードの対象からは原則として外れます。自社サービスに生成AIを組み込んで公衆に提供する構想が一つでもあれば、そこから先は「生成AI提供者」に当たり得る領域です。受託で構築過程の一部のみを引き受けて納入する形は原則として含まれませんが、自社の名前でサービスとして出すかどうかが分かれ目になります。

罰則のある制度ではないので慌てる必要はありません。ただ届出は令和8年10月26日から始まります。判定なしに企画書を書くと、後から前提ごと組み直すことになります。

2. 空いた時間の行き先を、社長が指名する

業務効率化は91.7%が効果を実感しているのに、コスト削減は60.1%、他社からの評価は40.3%。この落差は、浮いた時間の行き先が決まっていないことから生まれます。放っておけば、その時間は既存業務の丁寧さに吸収されます。

候補は遠くにはありません。既存商品の周辺で手が回らなかった顧客層、条件が合わず断ってきた小口の依頼、過去に立ち消えになった案。この三つを並べ、どれに時間を寄せるかを社長が名指しで決める。決めた分だけが次の一手になります。

令和8年7月14日に閣議決定された「人工知能基本計画(第Ⅱ期)」は、中堅・中小企業におけるAI導入に加え、AIを活用した地域密着型の新規事業の立ち上げ等を支援すると明記しています。

3. 外へ出す前に、守りの棚卸しを済ませる

令和8年8月25日の定例閣議で報告された令和8年版警察白書は、「深刻化するサイバー空間の脅威と警察の新たなる展開」を特集しています。本編によれば、令和7年中のランサムウェア被害の報告件数は226件で、規模別では中小企業が143件(63.3%)、大企業が64件(28.3%)。感染経路のアンケート(有効回答92件)では、VPN機器を利用されて侵入された事例が61件(66.3%)を占めました。

被害報告の6割超が中小企業、侵入口の3分の2はVPN機器です。**狙われないのではなく、対策が薄いから狙われています。**VPN機器の棚卸しと更新、認証情報の適切な管理、オフラインを含むバックアップ。この3点が費用対効果の面で最優先の投資です。お客様のデータを預かるサービスを出すなら、着手はさらに前倒しになります。

Before / After

Before: AIで見積書も議事録も速くなり、残業も少し減った。ただその先が空白のまま半年が過ぎた。新規事業を考えろと言われても材料が「なんとなくAIで何か」しかなく、自社が国のルールの対象なのかも分からず、外向けの話になると足が止まる。

After: 自社は社内利用が中心で、プリンシプル・コードの対象からは原則として外れると判定できている。外向けの構想一本は「提供者に当たり得る」前提で設計し、空いた時間は断ってきた小口案件を拾う体制づくりに寄せた。次の一手が、思いつきではなく手順の結論として出てくる状態です。

よくある失敗と、避け方

  • 「AIで何か新規事業を」から考え始める → 先に立ち位置を判定します。使う側にとどまるか提供する側へ出るかで、必要な準備も説明責任も変わります。
  • 効率化の数字だけを成果として報告する → 91.7%が効果を実感する業務効率化は入口です。コスト削減60.1%、他社からの評価40.3%という落差を次の目標に置きます。
  • 罰則の有無だけでルールを判断する → プリンシプル・コードは罰則のないコンプライ・オア・エクスプレインです。ただし理由を説明できない状態は、取引先や金融機関への説明材料を手放すことになります。
  • 守りを後回しにしてサービスを出す → 令和7年中のランサムウェア被害の報告226件のうち中小企業が143件です。外へ出す前にVPN機器と認証情報とバックアップを確認します。

こんな社長に向いています

  • AIで業務は速くなったが、その先の打ち手が出てこない
  • 新規事業を考えたいが、考える材料が見つからない
  • 自社がAIのルールの対象になるのか判断がついていない
  • 外向けにAIを使ったサービスを出したいが、リスクを整理できていない
  • 効率化の効果を、売上や社外の評価につなげる道筋を描けていない

ひとつでも当てはまるなら、足りないのはアイデアではなく、判断の手順です。

「次の一手」は、思いつきではなく手順から生まれます

AI CSO は、市場と制度の変化を自社の事業設計に効く材料として翻訳します。「使う側」か「提供する側」かの判定、空いた時間の行き先の選定、守りの棚卸し。この順番で、次の一手を紙に落とすところまで伴走します。

料金は月5万円(税別)。まずは試したい方には、お試し月3万円(税別)もご用意しています。

参考・出典

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