AI導入は「新しいシステム」を入れることではない|いま使っている会計ソフト・Excelから始める一歩

AI CTO
IT化・DXを実際に推進する技術担当
「AI導入って、何から手をつければいいんだ」社長へ
「AIを入れたい。でも、何から始めればいいのか分からない」——いま、私のところに一番多く来る相談がこれです。
新しいシステムを探して、ベンダーに見積もりを取って、社内に説明して、導入研修をして……。そう考えると、専任のIT担当もいない会社では、いつまでも一歩目が踏み出せません。「うちには無理だ」と棚上げにしているうちに、また半年が過ぎていく。そんな社長は、決して少なくないはずです。
でも、ここで一度立ち止まってほしいのです。**AI導入とは、新しいシステムを買ってくることではありません。**いま会社で毎日使っているソフトの「中」で、AIが使えるようになってきた——これが、いま起きている本当の変化です。今日はこの話を、専門用語抜きで整理します。
いま起きていること——「いつものソフト」がそのままAIになる
2026年5月、技術を預かる立場から見て見逃せない発表がありました。
ひとつは、Claudeを開発するAnthropicが、中小企業の経営者向けに「Claude for Small Business」というパッケージを発表したことです(Anthropic公式)。何が中小企業にとって大きいのか。これは会計ソフトのQuickBooks、決済のPayPal、契約のDocuSign、Google Workspace、Microsoft 365といった、社長が日々使っているツールと最初から繋がっている点です。請求書の督促、月次決算の消込、キャッシュフロー予測、粗利分析、契約レビューといった、まさに日々の実務をそのまま自動化できる「すぐ使えるワークフロー」が用意されています。
もうひとつは、OpenAIがExcelとGoogleスプレッドシート向けのChatGPT連携を、全プランで一般提供し始めたことです(Gulf Times報道)。スプレッドシートを離れずに、「この列を集計して」「この数式を作って」と日本語で頼める。関数が苦手な担当者でも、いつもの表計算ソフトの中でAIに作業を頼めるようになりました。
共通しているのは、新しいツールを覚える必要がないということです。これまで「AI導入」と聞くと、何か別物を社内に持ち込むイメージでした。そうではなく、いま使っている会計ソフトや表計算ソフトの中に、AIの機能が入ってくる。社長が身構える必要は、思っているより小さいのです。
「人材・ノウハウ不足」は、実は始め方を変えれば解ける
とはいえ、現実の数字を見ると、中小企業のAI活用はまだ進んでいません。
帝国データバンクが2026年5月14日に公表した、全国2万社超を対象とした調査では、生成AIを業務で「活用している」企業は全体で34.5%。大企業46.5%に対し、中小企業は32.4%、小規模企業は28.0%と、はっきりとした規模の差が出ています(帝国データバンク)。そして、活用が進まない理由の上位に挙がったのが、「専門人材・ノウハウ不足」が41.3%、「情報の正確性」が50.4%、「情報漏洩リスク」が33.5%でした。
この「人材・ノウハウ不足」という壁を、多くの社長が「だから無理だ」の理由にしています。でも、技術を見てきた立場から言わせてもらえば、この壁は始め方を変えれば、かなりの部分が解けます。
なぜなら、先ほどの「いつものソフトの中でAIが動く」流れは、まさに専門人材がいなくても始められることを意味するからです。専任のエンジニアを雇って、独自のシステムを開発して……という重い入り方ではなく、いま契約している会計ソフトやGoogle Workspaceの中で、AIに「請求書の督促」「議事録の要約」「数式の作成」を頼むところから始める。これなら、ノウハウがなくても、今日から一歩目が踏み出せます。
それでも、社長が先に決めておくべき2つのこと
「いつものソフトで簡単に始められる」と聞くと、つい何も準備せず突っ込みたくなりますが、技術を預かる立場として、先に決めておくべきことを2つだけお伝えします。
1. 「どの情報までAIに渡すか」を先に決める
会計ソフトや表計算ソフトの中でAIを使うということは、売上データや顧客名簿、財務データをAIに読ませる場面が増えるということです。先ほどの調査でも、3社に1社が「情報漏洩リスク」を懸念に挙げていました。
便利だからと、何も決めずに顧客情報や機微なデータを無造作にAIへ渡すのは禁物です。「どの業務で・どのデータまでAIに見せていいか」を、最初に一枚の紙で決めておく。これだけで、社員も安心して試せますし、後で「あれを渡してよかったのか」と慌てずに済みます。
2. 「出てきた答えを人が確認する」運用は崩さない
AIは賢くなっていますが、契約・税務・財務といった専門領域で間違える可能性はゼロではありません。先ほどの調査で「情報の正確性」が最大の懸念だったのは、当然のことです。
だからこそ、**月次決算の消込も、契約レビューも、最終的に人の目で確認する運用は崩さない。**AIは「下書きとたたき台を高速で作る相手」と割り切る。この一線を引いておけば、安心して任せる範囲を広げていけます。
補助金で「自己負担を抑えて」始められる
「とはいえ、お金がかかるんでしょう」という社長へ、もうひとつ実用的な話を。
国の代表的なIT補助制度だった旧「IT導入補助金」が、令和7年度補正予算で**「デジタル化・AI導入補助金2026」**に名称を変え、機械学習や自然言語処理を使うAI搭載ソフト・サービス(生成AIを含む)が、はっきりと補助対象に明記されました(内田洋行ITソリューションズによる公募要領の解説)。通常枠で補助額5万円〜450万円、補助率は2分の1以内(条件により3分の2以内)。第1次締切は2026年5月12日でしたが、年に複数回の締切がある制度です。
つまり、ツールの選定と申請のスケジュールをセットで押さえれば、自己負担を抑えてAI導入に着手できるということです。「まず自費で小さく試し、効果が出たら補助金を使って本格化する」——こういう現実的な進め方が取れます。
Before / After
Before: 「AI導入=新しいシステム探し」と考え、見積もりや研修を想像して身構えたまま動けない。社員が個人的にChatGPTを触っているだけで、会社として何にどう使うかは決まっていない。「うちにはノウハウがない」を理由に、また半年が過ぎていく。
After: いま契約している会計ソフトやGoogle Workspace、Excelの「中」でAIを試す。最初に「どのデータまで渡すか」「人が確認する範囲」を一枚で決め、議事録の要約や請求書の督促のたたき台といった、外に渡しても困らない作業から1つだけ始める。効果が出たものだけ残し、本格化のタイミングで補助金を使う。
派手なシステム導入ではありません。新しい物を買うのではなく、いまある物の中で小さく試す。 これがいちばん速く、いちばん失敗の少ない始め方です。
こんな社長に向いています
- 「AI導入」と聞くと新しいシステム探しを想像して、一歩目が踏み出せない
- 社内にIT・システムに詳しい人がおらず、ノウハウ不足を理由に止まっている
- 会計ソフトやGoogle Workspace、Excelは使っているが、AI機能を活かせていない
- 情報漏洩が怖くて、社員にどこまでAIを使わせていいか決めかねている
- 補助金を使いたいが、何を・いつ申請すればいいか整理してほしい
月5万円(税別)の「IT・DXの判断相手」
AI導入で本当に難しいのは、最新ツールを揃えることではありません。いま使っているソフトのどの機能から始め、どのデータまで渡し、効果をどう測り、どこで補助金を使うか——この判断を、自社の事情に合わせて続けることです。ツールも制度も、四半期単位で変わっていきます。
AI CxOのAI CTOは、特定のベンダーと利害関係がありません。社長の隣で、いま契約しているツールに眠っているAI機能の棚卸し、最初に試す1つの業務の選定、情報の取り扱い範囲づくり、補助金の使いどころまでを、難しい専門用語を使わずに一緒に整理します。「これを任せると、毎月の○○が自動で終わって、△時間が浮きます」——社長に分かる言葉でお伝えします。
正社員のIT責任者を雇えば年収600万円以上。中小企業にはなかなか応募も来ません。AI CxOなら、まずはお試し月3万円(税別)、本格導入でも月5万円(税別)で、判断を支えるIT・DXの相談相手を手元に置けます。
まずは、いまお使いのソフトの棚卸しから。新しい物を買わずに、次の3か月で現実的にできる一歩を、一緒に決めましょう。
参考・出典
- Anthropic、中小企業向け「Claude for Small Business」を発表 — Anthropic公式(Introducing Claude for Small Business)
- ChatGPTのExcel・Googleスプレッドシート連携が全プランで一般提供開始 — Gulf Times
- 帝国データバンク調査:生成AIを業務で活用する企業は34.5%、中小企業は32.4%・小規模企業は28.0% — 帝国データバンク(TDB)
- 『デジタル化・AI導入補助金2026』(旧IT導入補助金)、生成AIを補助対象化し第1次締切を実施 — 内田洋行ITソリューションズ(中小企業庁 公募要領の解説)